戦術的に観るドリブルの有用性〜戦術の推移と運びのドリブル

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マジスタ#7
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新記事が遅くなってしまいました。マジスタ#7です!しばらく私情で忙しくなかなかアップできていませんでしたが、しばらく沢山記事を書いていきたいと思います!ラボ利用者の皆さんに楽しんで頂ければと思います。

前回はパスにフォーカスした記事を書きましたが、今回のテーマは「ドリブル」です。個人戦術の一種でもあるドリブルですが、ドリブルにもいろいろな種類があり、戦術的にドリブルを組み込んでいる選手、チームも見受けられます。

今回はそんなドリブルをほんの一部ですがご紹介していこうと思います。

ドリブル・戦術の進化

まずはサッカーにおけるドリブルの意義的なものの推移を話していきます。

1980年代、この時代はまだマンツーマンマークによる守備が主流で、圧倒的な個人技を持った選手、とりわけマラドーナやジーコをはじめとする南米の選手が猛威を振るっていました。

マンツーマンマークによる守備だったので1vs1の状況で彼らのような圧倒的な個人技を持った選手が独走状態で、どう考えても個人能力の高い選手がいるチームが強い時代です。

つまり戦術云々よりも、まさに「ドリブルが上手い人がいるチームが強い」ので単にドリブル最強!感がありました。

 

これが1990年代になると急激に変化してきます。ご存知の方も多いかと思いますがアリゴ・サッキの登場です。

彼はゾーンディフェンスを導入しサッカー界を一変させました。詳しくはまた記事にしようと思いますが、4人のDFをフラットに並べDFからFWまでの距離を縮め中盤をコンパクトにし自分達のゾーンを作り出すことでプレッシングを優位にすすめ相手からボールを奪い取る というものです。

南米選手による個人技が支配していたサッカー界において組織的に個の力を抑え込むことに成功したこの欧州の戦術は、他のチーム戦術や選手自身のプレースタイルにも大きな影響を与え、今日に至る現代サッカー戦術の進化の引き金ともなりました。

南米個人技主義だった80年代はピッチの中央 いわゆるトップ下と呼ばれる位置で10番タイプの選手が攻撃を操り猛威を振るったのに対し、サッキのゾーンディフェンス導入によりトップ下というポジションは360度全方向から厳しいプレッシャーのかかる狩場へと化しました。

(マラドーナなんかが代表的な選手で、手のつけられないマラドーナをどのように組織で抑えるかというのが欧州戦術のテーマでした。サッキもゾーンディフェンス完成のために試行錯誤し、マラドーナはそれをも破る化け物ぶりを見せますが、サッキの戦術の進化が完成しついにマラドーナという10番を抑えることに成功する…という過程がありますが、詳しい話は追々の記事で…)

 

これによりスター選手達は活躍の場をトップ下の位置からサイドへと移していきます。リバウドやフィーゴ、ロナウジーニョ、なんかがその代表例です。彼らは80年代に比べて少しゴールからは遠くなったものの、比較的プレッシャーの弱い(360度プレッシャーがくるわけではない)サイドを個人技で制圧し、一時代を築きます。

この時代も主戦場がサイドに移ったとはいえ、個人技つまりスター選手によるドリブル力がチームの核となっていた時代でした。

そこで先ほどのサッキの意思を受け継いだ多くの監督が、組織による戦術で南米選手のドリブルを止めようと図ります。数々の戦術が編み出され(やや省略)、次第にサイドを制圧していたウインガー達が封じ込まれるようになっていきます。

今までは個人色の強かったドリブラーですが、ここでグアルディオラの0トップ、メッシの登場です。メッシもキャリアの初めはウインガーでしたが、ペップの戦術によりFWでもトップ下でもない位置で漂う天才ドリブラーとなりました。今までの個人能力がサイドで封じ込まれるようになった時に、メッシの力を最大限まで引き出し、ドリブラーの新たな可能性を提示したペップはやはり偉大かと思います。(現在は某クラブを率いるのであまり褒めません)

このようにトップ下からサイドへそして0トップへとドリブラー達は、主戦場を変えてきました。スター選手1強→戦術がそれを封印→スター選手が新たな位置で輝き→また戦術の進化 といったように個人能力と戦術は互いに追いかけ合い進化を続けてきました。ただやはり人間の個人技には限界があるので、次第にドリブラーの進化よりも、攻撃面で組織的な戦術による「崩し」や「カウンター」などの戦術要素が強くなり、80,90年代の様な純粋なドリブラーは絶滅していきます。現代にもドリブラーと言われる選手は存在しますが、昔ほど圧倒的でドリブラーというより、監督による戦術的な要素をこなしながら、個人技を組み込むというスタイルの選手がほとんどです。守備組織の発展により、当たり前ですが個人技一点張りでは通用しないに時代になっているのですね。

簡単ですが戦術の歴史とともにドリブラーの役割の推移を見てきました。ここで言いたいことは、簡単に言えば現代の選手は「戦術的な要素を踏まえながらドリブルを効果的に使わなければならない」という時代ということです。

このことを念頭に置いた上で派手さはないけども重要なドリブルを見てみましょう。

戦術的なドリブルの例

ここで、ドリブラーが生きる場所を失いつつあったサッカーにおいて、上手くドリブラーに仕事を与えた戦術を紹介します。

今回紹介するのはアンチェロッティが率いたレアルマドリード。

上記の通り、これまでドリブラーの活躍の場は主にサイド-ウイングの位置にありましたが、アンチェロッティは中盤にモドリッチとディ・マリアを配置し中央やや低めの位置からでもドリブルを仕掛ける戦術を取りました。言わずもがなレアルの両サイドにはロナウドとベイルという世界最高峰のサイドアタッカーがいますので、放っておいても突破することもあるでしょう。ただこれを組織的に封印されることもあるので、モドリッチとディ・マリアというボールテクニックに優れたドリブラーを中央に持たせたのです。

彼らをこの位置でドリブルさせるメリットはと言うと、一言で言うと「相手の組織を乱すことが出来る」ということです。

簡単にその例を図でご紹介します。

例えばこのような状況を想定すると

従来通りウイングのスター選手にボールを預けると相手はコンパクトなプレッシングでそのスター選手を潰してきます。(まぁそれをたまにでも掻い潜る選手も存在し、それが本来のロナウドなんですが…)少なからずロナウドの使えるスペースはかなり狭くなりプレーの自由が奪われる状況になります。

そこでモドリッチのようにボールキープに優れた選手にドリブルをさせることで、周囲の相手を引き連れてロナウドのスペースを創る というものです。


本来この位置で中盤の選手がドリブルをすることは危険なプレーでもありますが、モドリッチやディ・マリア程のクラックで、状況判断にも優れた選手であればボールを失う危険性も少なく、優位な状況を作り出してくれるでしょう。

このように戦術的なドリブルによって創られたスペースをロナウド、ベイルの両サイドアタッカーが制圧するというスタイルは基本的に個人技が戦術であるマドリードにおいて効果的な戦術をアンチェロッティは採ったと思います。

パスによるスペース開け戦術はある意味1度、ボールが自分から離れているわけでパスカットされるリスクがありますが、ドリブルでボールを失わないのであれば、足元にボールを残したまま相手の組織を乱す、最高の戦術になる。と言ったところでしょう。

また現代の守備戦術は相手のドリブル突破を許さない前提で机上の論が成されています。なのでこのように戦術的にドリブルを織り交ぜられると非常に厄介です。リバプールではコウチーニョやララーナなんかがこういったドリブルで相手の守備理論を機能不全に落し入れるプレーが時折(いやしばしば)見受けられます。いくらボトムチームがVSリバプール用に守備戦術を固めても彼らが効果的な位置でボールを受け、敵数人を手玉にとるようなプレーをした時には相手も手がつけられないはずですよね。コウチにララナはまさにモドリッチやディ・マリアレベルのボールスキルとサッカーセンスを備えたプレーヤーなので是非戦術的なドリブルをどんどん行って欲しいと思います。

ボール回しを加速させるドリブル

「パスより速いドリブルはない」

「ボールを走らせろ。ボールは疲れない」

これはシャビ、そしてクライフの言葉です。どんなに人間が速く走ってもパスの方が速い。まあ当然の事です。

しかしパス以上にボール回しを加速化する効果を持つドリブルもあります。

一人よがりなドリブルをする選手はチームのスピードを停滞させる とよく言われ加速化させるプレーとはあまり言われてきませんでしたが、状況によりドリブルした方が速い場合が多々あります。これは当たり前のことなんですが、現代サッカーはあまりボールを持ってはいけないという意識から、ボールを自分で運んだ方がいいのにパスを選択するプレーが多くの見受けられます。

本来ドリブルとは目的地までボールを運ぶために行うプレーであり、自分がパスを出したい位置にボールを蹴れる位置までボールを運ぶ手段であっていいはずです。

このように赤いコーンで囲まれたエリアで3VS1の鳥かごをしているとします。(鳥かごとは真ん中の鬼の選手からボールを取られないように回す定番の遊びのようなものです。一応)

6番の選手が11番の選手にパスを出したい時、皆さんはどうしますか?方法は2通りです。

8番の選手にパスをしてズラしてから11番の選手に通すのが王道でしょう。

当たり前ですが、自分で相手の7番の選手からズレるドリブルをして11番に通す方もいるはずです。

これを赤いコーンを外して実際の試合の中盤に置き換えて見ましょう。

鳥かごで後者のプレーが選択出来るのであれば赤いコーンを外しただけの試合(もちろん人数などの状況は変わる)でもそういったドリブルが使えるはずです。ただ実際の試合となると失った時のリスクもありなかなかこの位置で自分の力で正確にボールを運ぶドリブルを出来る選手は意外と少ないです。

ただもしこのプレーを出来る選手-先程のモドリッチらのような-が入ればボールを運ぶためにパスしか選択肢がない選手よりも移動手段が多く格段にボール回しのスピードが速くなります。これがボール回しを加速化するドリブルの例です。簡単な例ですが随所でこのプレーが出来ると相手の守備組織の崩壊レベルが恐ろしいことになります。

このように自分が行きたいところに行くためのドリブルを使うべきだと思いますし、初めからパスの選択肢しかないようでは相手に組織的にハメられてしまう可能性も高くなってしまいますので、特に守備が組織化された現代においてこのようなドリブルの出来る選手がリバプールにももっと欲しいですね。(ララーナ◎ジニ・ジャン△)

‪>>【次ページ】ドリブルの種類。突破するドリブルと、ボールを運ぶドリブル

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